夫婦の一方が医師・歯科医師の場合、その保有する財産が高額なため、離婚に伴う財産分与が大きな争点になることがあります。

財産分与には、3種類の性格、すなわち、①婚姻中の夫婦の財産の清算としての性格(清算的財産分与)のほか、②離婚後の扶養としての性格(扶養的財産分与)、③離婚による精神的苦痛に対する慰謝料としての性格(慰謝料的財産分与)がありますが、中心的な要素は、清算的財産分与です。

清算的財産分与を行う前提として、夫婦の全体財産を、夫婦の所有名義ごとに分けて、各当事者の名義の純資産を計算することになります。そこで、対象となる財産を明確にする必要があります。

一般的には、土地・建物、預貯金、保険、有価証券、自動車、退職金などがありますが、以下のような医師・歯科医師に特有の資産についても評価する必要があります。

医療法人への出資持分

医師、歯科医師が医療法人を経営し、法人に対する出資持分を有している場合には、その出資持分は医師個人の資産ですので、財産分与の対象となる可能性があります。

もっとも、出資持分を財産分与としてそのまま譲り受けることは現実的ではないので、その持分の適正評価額の対価を受領するなどの解決を図ることが想定されます。

退職金

医療法人の場合、役員退職慰労金・弔慰金支給規定等によって理事等の役員に退職金を支出する規定を設けているところがあります。この退職金は財算分与の対象となる可能性があります。

また、個人開業の医師・歯科医師が小規模企業共済(個人事業主が退職金を準備しておく共済制度)に加入している場合は、この退職金が財産分与の対象となる可能性があります。

以上のような財産関係を整理して解決するには、法的な専門的知識が必要不可欠ですので、弁護士にご相談されることをおすすめします。